こんにちは
「加害行為は一気呵成にやってしまわなくてはならない。」
「人間は、恐れている人より、愛情をかけてくれる人を容赦なく傷つけるものである。」
みなさんはこんな言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。今回はマキャヴェリの「君主論」を要約します。
初めて書かれたのは約500年前にも関わらず、今なお読み継がれている「君主論」。現代に生きる私たちへの示唆に富んだ戦略論、リーダー論の本です。
このページでは、わかりやすく要点を抑えることと、本の内容を曲解せずにそのまま伝えることの二つを両立することを目指しました。なるべく簡潔な文体、構成で、章立てに従い本書の要点をまとめています。
君主論を初めて知ってちょっとだけ内容を知りたい人、本文全てを読まずに内容を抑えたい人、すでに一度読んだけれどもう一度振り返りたい人、そんな人がスラスラ読めるまとめとなっています。
それでは、どうぞ。
- 献辞
- 第一章 国の分類
- 第二章 世襲君主国の統治のしかた
- 第三章 新たにできた君主国の統治のしかた
- 第四章 アレクサンドロス大王の死後の統治
- 第五章 自由な暮らしに慣れた領土をいかに統治するか
- 第六章 自らの力量によって統治をおこなった者
- 第七章 運や他人の好意によって君主になった者
- 第八章 悪辣非道な行為によって君主になった者
- 第九章 市民型の君主国
- 第十章 防衛に第三国の力が必要になる国
- 第十一章 教会君主国
- 第十二章 武力の種類と傭兵軍の無能さ
- 第十三章 外国支援軍
- 第十四章 軍備についての君主の責務
- 第十五章 君主に対する毀誉褒貶
- 第十六章 鷹揚(気前の良さ)と吝嗇(ケチ)
- 第十七章 冷酷か、憐みぶかいか。恐れられるか、愛されるか
- 第十八章 君主の信義との付き合い方
- 第十九章 君主は恨まれる、憎まれることを避けねばならない
- 第二十章 君主は城塞を築くべきか
- 第二十一章 君主が民衆の支持を得るための振舞い方
- 第二十二章 君主が側近に選ぶ秘書官について
- 第二十三章 へつらう者をどう避けるか
- 第二十四章 イタリアの君主が領土を失ってきたわけ
- 第二十五章 運命をどう捉えるか
- 第二十六章 イタリアの外部からの解放を祈って
献辞
マキャヴェリ「君主のあなた様に、私の経験や読書から得た知識を献上します。主題をはっきりさせるため、体裁や飾った文体を省きました。どうぞお納めください。」
第一章 国の分類
国は以下のように分類できる。
共和国
君主国
君主国は以下のように分類できる。
世襲君主国
新たにできた君主国
新たにできた君主国は以下のように分類できる。
全面的に新しい国
もとの世襲君主国に新たに他国を併合した国
新たに併合した他国は以下のように分類できる。
君主制のもとでの暮らしに慣れた領土
自由な暮らしに慣れた領土
新しい国の獲得の仕方は三つである。
1 自国の武力によって征服
2 運による獲得
3 力量による獲得
第二章 世襲君主国の統治のしかた
世襲君主国は統治がしやすい。なぜなら昔からの伝統、慣習の維持と、不測の事態には時間かせぎでなんとかすることができるからである。
例 イタリアのフェラーラ公
第三章 新たにできた君主国の統治のしかた
もとの世襲君主国に新たに他国を併合した国は統治が難しい。
理由は二つある。
1 民衆は前よりよくなると信じて、為政者を変えたがる
2 征服の際に、どうしても新しい土地の住民への加害行為が行われるため、彼らから恨まれる
☆ポイント
他国の侵略に際しては、その地域の住民からの支援を取り付ける
例 フランス王ルイ12世とルドヴィーゴのミラノでの攻防
☆ポイント
いったん謀反が起きた国をもういちど奪取すれば、以降めったなことでは奪われなくなる。それは謀反によって君主は反逆者の摘発と弱点のカバーに努めるようになるからである。
新たに併合した他国の2種類について考える。
1 君主制のもとでの暮らしに慣れた領土である場合、統治は易しい。
☆ポイント
・これまでの統治者の血統を根絶やしにする
・住民たちの法律や税制に手を付けない
2 自由な暮らしに慣れた領土である場合、統治は難しい。
そのための解決策は二つある。
1つ目 征服者が現地に移り住む
理由 不穏な気配を早く察知し、すぐに対策を立てられるから
2つ目 現地に移民兵(もとの国の軍人を現地に移り住ませる)を派遣する
理由 忠誠心が厚い。経費がかからない。民衆を傷つけない。
※移民兵によって、一部の現地の人々は移民兵に土地を奪われるが、全ての領民に比べれば少ない犠牲で済む。また彼らは散り散りになって貧困に陥るので反乱は起こりにくい。
「人はささいな侮辱には仕返ししようとするが、大いなる侮辱にたいしては報復しえないのである。したがって、人に危害を加えようとするときは、復讐のおそれがないようにやらなければならない。」
引用 本書25ページ
☆近隣の国の統治、交際のポイント
1 君主は近隣の弱小国の盟主となり、庇護者となるべき。同じ地域の強国の弱体化につとめ、侵入を許さないようにつねに警戒するべき。
2 近隣の弱小国には極端に大きな権限を持たせてはならない。
3 危害は早期の発見、対策が大事。発見が簡単になったころには手遅れになっていることが多い。
4 戦争を避けようと及び腰になったり時間をかせいだりすることは、敵方を利する愚かな行為だ。戦争は避けられない。時間をかせいでも全ていずれくる。対策は早く講じる。不穏分子の芽を摘もう。
例 フランスのルイ王のイタリア征服の仕方を批判
自国の兵力でイタリア(フランスの味方になることを表明した)を攻略できるならやればいい。しかしその能力がないのに、イタリアを攻撃して、分割統治をしようとした。その結果イタリアは弱体化し、隣国のローマ帝国の強大化を許してしまった。ルイ王は味方に立ったイタリアをしっかり引き付けて守ってやるべきだった。
一般的な大原則
「ほかの誰かをえらくする原因をこしらえる人は、自滅する」
引用 本書34ページ
第四章 アレクサンドロス大王の死後の統治
君主国は二つに分けられる。
1 一人の君主とそれに隷属する公僕 (例 トルコ)
2 一人の君主、君主と封建的な関係を結んだ諸侯、諸侯の領有するそれぞれの土地の人々(例 フランス)
1の国 征服は難しく、統治は易しい
隷属しているため、君主の身内からの謀反が起こりにくく、彼らの買収も難しい。買収できたとしても民衆を巻き込むことができない。
よって征服の際は、敵が一致団結して対抗してくることを予想しなければならない。内部の寝返りは期待できない。全面的な戦争によって、自力で、徹底的に打ち負かし、君主の血統を根絶やしにしなければならない。
2の国 征服は易しく、統治は難しい
不満分子や変革を望む諸侯が国内に一定数いるため、それと組めば容易に侵攻できる。しかし、維持が難しい。君主の血統の根絶やしは効果が薄く、いずれほかの諸侯の不満分子に奪われてしまう。
ダレイオス王国(1の国)は徹底的に打ち負かし、その後も安定した統治が続いた。
フランス王国(2の国)は、戦争勝利後も絶えず反乱が起こり、そのたびに鎮圧した。時間が経つにつれて、古い諸侯が亡くなり、ついに反乱もなくなった。
第五章 自由な暮らしに慣れた領土をいかに統治するか
選択肢は三つである。
1 そのような都市は滅亡させる。
2 そのような都市に君主自身が移り住む。
3 そのような法律や税制には手を付けず、傀儡政権をつくらせ、一定の貢納をさせる。
例
スパルタ 3を実行 結果→失敗
ローマ 1を実行 結果→成功
自由な生活になじんできた都市では、自由という名分や従来の制度を掲げて絶えず反乱が起こる。いくら歳月がたっても民衆は自由という名分や従来の制度を忘れないので、反乱は終わらない。
そうした都市は活気があり、憎悪や復讐の願いは根強い。よってそのような都市は抹殺してしまうのが一番安全だ。
第六章 自らの力量によって統治をおこなった者
自分自身の力量によって君主になった人間(例 モーセ、キュロス、ロムルス、テセウス)がいる。
彼らはいずれも運命から授かったチャンスに出会い、それを自らの力量によって立派に活かした。
力量によって君主になった人間は、国の征服(新制度の導入)には困難が伴うが、国の維持はたやすい。
新制度の導入は旧制度で甘い蜜を吸っていた人を敵に回す。また応援に回った人も新制度を利用しようとたくらんで仕方なく応援する。
統治を自分でやったか、他人にお願いしたかで結果は大きく変わる
また民衆の気質は変わりやすいことに注意するべきだ。民衆を説得するのは簡単だが、それを信じ続けさせることは難しい。そこで武力が必要になる。武力によっていったん信じ込んだ民衆をそのままつなぎとめるのである。
第七章 運や他人の好意によって君主になった者
君主になる経緯は二つある。
1 自らの力量によって君主になった者(例 フランチェスコ)
手に入れるのに苦労するが、維持するのにはとくに苦労しない。
2 運によって君主になった者
苦労せずに手に入れることはできても、維持に大いに苦労する。
☆新しく君主になった者が心がけるポイント
例 チェーザレ・ボルジア(ヴァレンティーノ公)
「それゆえ、敵から身を守ること、味方をつかむこと、力、あるいは謀りごとで勝利をおさめること、民衆から愛されるとともに恐れられること、兵士に命令を守らせて、かつ畏敬されること、君主にむかって危害におよぶ、あるいはその可能性のある輩を抹殺すること、旧制度を改革して新しい制度をつくること、厳格であると同時に、丁重で寛大で闊達であること、忠実でない軍隊を廃止し、新軍隊を創設すること、国王や君侯たちと親交を結び、あなたを好意的に支援してくれるか、たとえあなたに危害を加えようとしても、二の足を踏むようにしておくこと、以上すべてのことがらこそ、新君主国にあって必要不可欠なものと信じるならば、人は、公の行動ぐらい生々しい好例を見出せないだろう。」
引用 本書68、69ページ
第八章 悪辣非道な行為によって君主になった者
一私人から君主に登りつめるには二つの選択肢がある。
1 ある種の悪辣非道な手段を用いる
2 一市民が仲間の支援の後押しを受ける
この章は1について語る。
例 シチリアのアガトクレス
こういう手段で君主になっても栄光はつかめない。これまでの卓越した英雄と並ぶことはできない。
例 フェルモのオリヴぇロット
こちらも残虐な手段を用いた。しかし、その後の権力は安泰だった。
両者の違いはなにか。それは残酷さをへたに使ったか、立派に使ったかの違いだ。
残酷さを立派に使うとは、このようなことである。
「自分の立場を守る必要上、残酷さをいっきに用いて、そののちそれに固執せず、できる限り臣下の利益になる方法に転換する」
引用 本書80ページ
☆ポイント
「加害行為はいっきにやってしまわなくてはならない。そうすることでそれほど苦汁をなめさせなければ、それだけ人の憾みを買わずにすむ。これに引き換え、恩恵は、よりよく人に味わってもらうように、小出しにしなくてはならない。」
引用 本書80ページ
第九章 市民型の君主国
先の章の一私人が君主に登りつめる方法の二つ目、「2 一市民が仲間の支援の後押しを受ける」について語る。
一市民が仲間の支援の後押しを受ける場合は、全て運や力量にかかるというより運に乗っかるずるさが必要である。
1 民衆の支持を得てなるとき
維持しやすい。民衆を意のままに操ることができる。
民衆は抑えつけられないことを願っているため、彼らの望みをかなえてやるのは容易である。
常に民衆を味方につけておかなければならない。多数派であるため敵に回すのは危険だ。最悪の事態は民衆から見放されることである。
2 貴族の支持を得てなるとき
維持は難しい。自らを支持する貴族たちは自らと同じ地位にあると思い込む。そのため意のままに操ることができない。
貴族たちの第三者を抑えつけたいという欲望はかなえてやりづらい。
また、少数派であるため敵に回しても脅威にはならない。
自らの運命と結びつかない者で、故意に、野心的なわけがあって、自らについてこない者に注意である。君主はこういうものを警戒し、公然の敵とみなさなければならない。
貴族の支持を得て、(民衆の意志に反して)君主になったら、民衆の保護に努めること。
人は「危害を加えられると信じた人から恩恵を受けると、恩恵を与えてくれた人に、よりいっそうの恩義を感じるものだ。」
本書 87ページ
普段から民衆に対して指導力を見せつけ、準備をととのえ、事態に適切な措置をとること。そうやって民衆の心をひきつけておけば、緊急事態にも自らに忠誠を誓ってくれる。
第十章 防衛に第三国の力が必要になる国
緊急の場合、君主が国を独力で守れる場合→6,12,13章を参照
緊急の場合、君主が第三者の国の支援が必要になる場合
自国の都市の城郭を強化し、備えを強固にしておくこと。くれぐれも城外での戦争(野戦)を考えないこと。
日頃から民衆に保護を与えていれば、いざというときも城内から逃げ出したりせずに、防衛してくれる。人々は「我が家をなくし、無一文になるまで尽くした私に、君主はさぞ恩義を感じてくれるだろう」と信じているからである。
第十一章 教会君主国
教会君主国は一度国を建ててしまえば、その後は安泰で幸せである。臣下の裏切りの心配もないし、君主の治世を臣民がチェックすることもない。神によってたたえられ護持された国のことをとやかく言うのは神への無礼である。
第十二章 武力の種類と傭兵軍の無能さ
すべて国の基礎となるのはしっかりした武力としっかりした法律だ。
ここでは武力の種類と、その善し悪しを語る。武力を分類して良い順に並べると以下のようになる。
自国軍>混成軍(外国と自国の)>>外国からの支援軍>>>>傭兵軍(お金を払って雇う軍)
傭兵は
無統制、無規律、野心的、不忠実
1 平時は給料をむさぼり緊急時には逃亡する。
2 自らの評判を上げるために、ほかの部隊を批判するという不合理な行為を働く。
3 残虐な行為が必要なときにおじけづいて殺せない。
傭兵はまさに最悪の種類の武力である。
第十三章 外国支援軍
外国支援軍
「それじたいは役に立ち、悪くないのだが、おおかた招いた側に禍いを与える」
本書116ページ
なぜなら外国支援軍を招いた場合、たいていはこの二つの未来しか残されないからである。
支援軍の敗北→自国の滅亡
支援軍の勝利→自国が支援軍の支配下になる
「他人の武器というものは、あなたの背中からずり落ちるか、重荷になるか、それともあなたが窮屈を我慢するか、いずれかになるものだ」
本書119ページ
第十四章 軍備についての君主の責務
君主は戦いと軍事上の訓練や制度以外に関心を持ってはいけない。優雅な道に関心を向けたとたんに国を失う。
非武装になると相手に見くびられる。
これは君主がまず避けるべき汚名である。
いかなるときも常に軍事上の訓練を考えなければならない。
1 行動によるもの
現地に赴き、地形の把握、実戦の想定をして、どんなときにも正しい対応がとれるように準備する。
2 頭を使った訓練によるもの
歴史書に親しみ、読書によって、英雄がそのときとった行動を考察する。勝敗の原因はどこにあったかを考え、勝者から学び、敗者の犯した過ちを繰り返さないようにしなければならない。
第十五章 君主に対する毀誉褒貶
人はいかに生きるべきかという理想ではなく、人はいかにして生きているかの現実から、とるべき行動を考えるべきだ。「善い行いをする」と公言するだけでなく、よくない人間にもなれるようにするべき。
地位を危うくする汚名は避けるべきだ。地位を危うくしないものでもなるべく避けるべきだ。汚名をかぶることがどうしても避けられないようなら気にする必要はない。
政権の存亡にかかわるときは評判など気にせずに悪徳を行使するべき。
第十六章 鷹揚(気前の良さ)と吝嗇(ケチ)
鷹揚とみられることはよいことに思えるかもしれないが、現実は違う。
「鷹揚であろう」としてふるまうことは逆に悪評を買う。また、あっという間に全財産を使い果たしてしまう。そしてそうなってから慌てて支出を引き締めるとますます評判が落ちる。
けちであれ。節約が大切だ。けちだという評判を意に介するな。
国民に課した税金を適切に使い、有事のときのために日頃から貯蓄しておくべきだ。
君主になる途上の者は鷹揚だとみられることが大切だ。君主になったらけちになれ。
ただし赤の他人の物を使うときは鷹揚であってもよい。が、自らの浪費は控えよう。
君主が避けるべきはさげすまれること、恨みを買われることだ。気前の良さはあなたをこのどちらかに追いやる。
第十七章 冷酷か、憐みぶかいか。恐れられるか、愛されるか
・冷酷か、憐みぶかいか
憐みぶかいと評されるほうがよいが、へたにかけないことである。
自分の領民の規律を正すためなら、多少の悪評を気にするべきではない。憐みがふかすぎて、混乱を招いたり、目の前の殺戮を黙認したりしてはならない。ごくたまに見せしめの残酷さを見せつければよい。
・恐れられるか、愛されるか
恐れられるほうがはるかに安全である。
普段愛を口にする人は、いざというときに助けてくれない。
「たほう人間は恐れている人より、愛情をかけてくれる人を容赦なく傷つけるものである。その理由は、人間はもともと邪なものであるから、ただ恩義の絆で結ばれた愛情などは、自分の利害のからむ機会がやってくれば、たちまち断ち切ってしまう。ところが恐れている人については、処刑の恐怖がつきまとうから、あなたは見放されることがない」
引用 本書142ページ
ただし、恨みを買わないこと。恨みを買わないためには、人々の財産に手を付けないこと。
「人間は父親の死をじきにわすれてしまっても、自分の財産の喪失は忘れがたいものだから、とくに他人の持ち物に手を出してはいけない。」
恐れられることと恨みを買わないことは両立できる。
軍隊を用いる際はいっさい「冷酷だ」との声に耳を貸さないこと。
第十八章 君主の信義との付き合い方
戦いに勝つには、二つの方法がある。
1 法律
2 力
力は二種類がある。
1 ライオン
2 狐
相手が約束を守らないように見えれば、あなたも約束を守る必要はない。そしてそれをもっともらしい口実で言いつくろえ。「狐」はじょうずに粉飾し、猫をかぶり、厚かましくなければならない。「狐」をたくみに使いこなせ。
「よい気質をなにからなにまで備えている必要はない。しかし、備えているように見せることが大切である」
引用 本書149ページ
「りっぱな気質を備えていて、後生大事に守っていくというのは有害だ。そなえているように思わせること、それが有益なのだ。」
引用 本書149ページ
謁見してくるごくわずかな人にの前では、信義に厚く、慈悲深く、裏表なく、人情味にあふれ、宗教心に厚い人物と思われるようにふるまえ。
その他大勢の大衆は外見だけを見て、出来事の結果だけ見て、勝手に判断する。
第十九章 君主は恨まれる、憎まれることを避けねばならない
いかにして恨まれないようにするか。それは
臣下の財産、婦女子、名誉を奪わないことである。
それでたいていは満足する。
いかにして軽蔑されないようにするか。それは
自分の行動に偉大さ、勇猛さ、重厚さ、剛直さをうかがわせることである。
自ら下した決定は一度出したら覆すな。
「君主をだましたり、言いくるめたりすることはとても不可能だ」という評判が立つようにしろ。
☆反乱の防止のポイント
大勢の民衆からの支持を手放すな。反乱者は恐怖心、猜疑心、刑罰の心配などでみなびくびくしている。圧倒的多数の民衆が君主側に立っていることを示しておけば、そうかんたんに反乱は起こらない。
民衆の支持を得つつ、貴族に嫌われてもいけない。
「恩恵を与える役はすすんで引き受け、憎まれ役は他人に請け負わせればいいということだ」
引用 本書159ページ
「君主は貴族たちを尊重して、しかも民衆の憎しみを受けないようにしなくてはならない。」
引用 本書159ページ
第二十章 君主は城塞を築くべきか
自国の領民は武装させるべきだ。それは二つの理由がある。
1 彼らをそのまま兵力として取り込めるから
2 君主に下心をもっていた人が忠誠を誓うようになるから
武装を解除すると「あなたが彼らを警戒している、信用していない」というメッセージを彼らに与えてしまう。
一方で、新たに外国を併合した場合は非武装にしておくべきである。
あえて内紛を起こさせるのは原則的に効果的でない。内紛で劣勢な側が他国と結びつく危険性があるからである。
侵略の際に、もとの国に不満を持ちこちらに寝返ってきた者は危険だ。旧政権に満足してこちら側を敵視していた者を味方につけるほうがよい。
国外の勢力を恐れる場合には、築城はやめるべきだ。
国内の勢力を恐れる場合に、城を築くべきだ。
いずれにしても国内の民衆の憎しみを買わないことが一番の安全策である。
第二十一章 君主が民衆の支持を得るための振舞い方
大事業(戦争)を行うことで自らの評判を上げろ。
だれの味方であるとか敵であるだとかの姿勢を明確に示すことが大切だ。
中立の立場でいると、勝者の餌食か敗者のうっぷん晴らしに使われる。
そして名分がないので、誰も手を差し伸べてくれない。
戦いが終わった後のことを考えよう。すると
勝者からすれば逆境で手を差し伸べてくれなかった国を信頼できない。
敗者からすれば自分たちと命運を共にしてくれなかったので信頼できない。
一方で、仮に片方についたとしよう。
勝利すると味方したほうの国は多かれ少なかれ恩義を感じる。
仮に敗北したとしてもあなたはその者から迎えてもらえる。
争いにどちらが勝っても自分に影響がない場合であっても、どちらかにつくべきだ。どちらかを滅ぼしてしまえるからである。
ただしやむを得ない場合を除き、できる限り強者のもとについて第三国を攻撃したりしないこと。なぜなら勝利後に強者の意のままになってしまうからだ。
同盟を避けられない状況ではどちらかと組まなければいけない。危険なように見えるかもしれないが、君主はいつも安全策がとれるわけではないと思うべきだ。
☆ポイント
・君主は力量あるものを重用し、肩入れしていることを示す
・各々の市民が安心して商売などを営めるようにしておく(財産のむやみな取り上げや重税で市民を委縮させない)
・殊勝な心持ちで国に奉公してくれる人には褒賞を与える
第二十二章 君主が側近に選ぶ秘書官について
君主の秘書官の扱いはいかにするべきか。
君主の力量を測るには、秘書官がいかに有能かを見ればいい。有能な秘書を見つける目があるということが君主の力量の証明になる。
君主は秘書官に忠誠心をもたせるために、最大限の豊かな暮らし、名誉、配慮を与え、責務を分かち合わなければならない。それによって秘書官に「自分がいなくては君主はどうにもやっていけない」とわからせる。そしてこれ以上の名誉や財産を望めないくらい与えて変革を望まないようにする。
それによって君主と秘書官のあいだで信頼関係が結ばれる。
第二十三章 へつらう者をどう避けるか
こびへつらう人間から身を守るのは難しい
1 過剰にへつらう人間を避ける→見くびられる
2 真実を告げられても決して怒らないと示す→君主への尊敬の念が消える
そこで
3 幾人かの賢人を選んで、彼らからのみ自由に真実を述べさせる
決して賢人以外の人々に耳を貸してはいけない。外野の人間に、助言しようと思わせない
決断は君主自らが最終的に下すようにして、一度下した決定は翻さない。
君主の自分が望むときに賢人から聞くのである。
☆ポイント
告げられた真実は忍耐強く聞く。誰かが意見を憚ったときは、むっとした顔を見せる。
第二十四章 イタリアの君主が領土を失ってきたわけ
国を失う理由は二つある。
1 軍事面で弱体化する
2 民衆を保護しすぎて、貴族たちから身を守る策を怠る
誰かに助け起こしてもらうことは期待できない。そんなことはまず起こらない。
国はあなたの手腕に基づく防衛のみによって存続する。
第二十五章 運命をどう捉えるか
運命という大きな避けられない流れは存在するが、その激流にたいして堤防を築くことである程度被害は抑えられる。
君主の流儀と時代の流れ(時勢)が合うかどうかもその国の盛衰に大きくかかわる。
しかし、私が思うには
「人は慎重であるよりは、むしろ果敢に進むほうがよい」
引用 本書 207ページ
運命という女神は突き飛ばし、押しのけねばならない。
慎重な人間に女神は道を譲らない。
第二十六章 イタリアの外部からの解放を祈って
ご尊家(この書を献上した相手)によって今こそ、息絶え絶えのこのイタリアをふたたび強固な国へと復活させ、平穏をもたらしてくれますように願っている。
以上です。
この要約記事があなたのお役に立てたなら幸いです。
ありがとうございました。