山田悠介の小説『リアル鬼ごっこ』の疾走感

今回は山田悠介の小説『リアル鬼ごっこ』を紹介します。

 

この小説はホラー小説です。

 

ジェットコースター、あるじゃないですか。あれって、落下するときに一瞬だけ、内臓がフワッと浮き上がる感じがしますよね。

 

あの恐怖と気持ち悪さがジェットコースターの醍醐味でもあるわけなのですが。

 

その感触が、リアル鬼ごっこでは、ずーーーーーっと続きます。

 

あの一瞬の「あ、やばっ」ってなる恐怖が最大限まで増幅されます。そして怖いものみたさで、覗き込むように前に進んで、一気に終わります。

 

本当にジェットコースターそのもののような小説です。

 

リアル鬼ごっこ 山田悠介

 

 

西暦3000年。人口約1億人、医療技術や科学技術、そして機械技術までもが恐ろしいほど発達し、他国と比べても全ての面でトップクラスを誇るとある王国で、「佐藤」姓はついに500万人を突破した。

建国以来目立った戦争が起きていなかったが、先代の王が逝去し、次の150代目の王が即位してから状況は一変する。先代が早くこの世を去ったため、現在の王様は21歳。彼は自分勝手でわがまま、優柔不断な性格であったため、窃盗・強盗・放火・殺人まで起きるようになってしまい、国内は混乱と戦火に包まれてしまう。皇后が亡くなってからはますますエスカレートする一方だが、王様は何の危機感も持たず、今まで通りただただ優雅な日々を送っていた。

そんなある日、王様は同じ姓を持つ人間がたくさんいることに怒りを覚え、改名させればいいだけのはずなのに、「佐藤さん」を効率的に抹殺するために「リアル鬼ごっこ」なる計画を発表する。

横浜に住む大学生の佐藤翼は父親・輝彦との2人暮らし。彼が7歳の時に母親の益美は3つ下の妹のを連れ、酒におぼれて暴力を振るう父親から逃げ出していた。そんなある日、翼は新聞を読んでいる最中「リアル鬼ごっこ」のニュースを知り、否応なしに参加することになる。

リアル鬼ごっこ - Wikipedia

 

 

捕まったらゲームオーバー。残機0の命をかけた鬼ごっこ

 

本を読んでいるはずなのに、ありえないくらいの疾走感があります。この小説はそれにフルコミットしています。というか、それ以外は何もありません。

 

「終わりに向かって全力で走り出すと、今この瞬間が輝き出す」死が背後から迫っているという極限状態が今生きているという事実を信じられないくらい輝かせます。

 

稚拙だ、とかこんなのは小説じゃない、みたいな批判はすさまじいものでAmazonの評価は真っ二つに割れています。

 

ですが、この小説の持つ疾走感。エンターテインメントとしての完成度はすさまじく読書をしているはずが映画を見ているような迫力があります。

 

ぜひ読んでみてください。

 

https://www.gentosha-book.com/special_interview/yamada/

 

リアル鬼ごっこ (幻冬舎文庫)

リアル鬼ごっこ (幻冬舎文庫)