コンビニ人間で気持ち悪いのは主人公ではなく彼女を包む「常識」のほうである

 

今回は村田沙耶香コンビニ人間』をご紹介します。

 

又吉直樹さんの火花が受賞したことで有名な芥川賞ですが、これもまたその受賞作。

 

火花の翌年に受賞した作品です。現在まで161回の芥川賞の中で、売り上げ100万部を超えているのは10作品のみ。そしてその中で新しく100万部突破入りを果たしています。

 

「火花」のせいで霞んでいますが、めちゃくちゃ売れてる小説です。すさまじい内容でした。

 

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 

コンビニ人間 村田沙取香

 

この小説の主人公は古倉恵子(ふるくらけいこ) 。コンビニのアルバイト店員です。 未婚で恋愛経験もなく36歳。

 

こうやってステータスだけを見ると、社会からのはぐれ物のように見えるかもしれません。定職にもつかず、恋愛も結婚もせず、ただコンビニでのアルバイトをし続ける未婚女性。

 

 

彼女は実際にその社会一般の女性ではないことで世間から圧力を受けます。

 

「いい年してあなたは何をやっているの?」

 

 

それでも彼女は淡々とコンビニで毎日を過ごします。社会とのズレとそれを無機質に見つめる彼女、それでも社会は回り続ける。

 

その描写は強烈に不気味です。

 

この本に対して主人公の女性が気持ち悪いという声もありそうですが、僕はそうは思いません。

 

本当に気持ち悪いのは「ふつう」「まとも」「当たり前」を悪気なく押し付けてくる社会全体のほうなのではないか。

 

彼女は彼女自体幸せな生活を送っているのです。いったいそれでどのようにして彼女を否定することができるのか。それを著者は問うているのだと思います。

 

「世間体」や「常識」の不気味さ、今の自分を見失わないことがどれほど困難なことなのかを教えてくれる小説です。

 

 

ぜひ読んでみてください。

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)