小説「君の膵臓を食べたい」をご紹介します。
あらすじ
あらすじはWikipediaより
「君の膵臓をたべたい」……主人公である「僕」が病院で偶然拾った1冊の「共病文庫」というタイトルの文庫本。それは「僕」のクラスメイトである山内桜良(やまうち さくら)が綴っていた秘密の日記帳であり、彼女の余命が膵臓の病気により、もう長くはないことが記されていた。「僕」はその本の中身を興味本位で覗いたことにより、身内以外で唯一桜良の病気を知る人物となる。
「山内桜良の死ぬ前にやりたいこと」に付き合うことにより、「僕」、桜良という正反対の性格の2人が、互いに自分には欠けている部分にそれぞれ憧れを持ち、次第に心を通わせていきながら成長していく。
この小説から学んだこと
この小説は一言でいうと「死生観」の小説です。
「明日地球が滅亡するとして、あなたは今から何をしますか。」
という質問が一冊にまとまった感じの本、とでもいえばいいのでしょうか。
少女は余命が僅かであることを自ら悟りながらも、それを当たり前のことのように「僕」に向かって語りかけます。
まるで自分が死に向かっているなんて気づいていないかのように、日々楽しげに生きて、淡々と残り時間を消費していきます。
他人に興味がなく光のない世界を生きていた「僕」はそんな奇妙な彼女に振り回されていきます。
「僕」は彼女と行動を共にするなかで次第に彼女に引き込まれていきます。
彼女の生きる姿勢から学べるのは、生きることがいかにかげがえのないものなのか、ということです。
死後の世界はあるのだろうか、
明日死ぬとして何をしようか、
そもそも生きてるってなんなんだろうか…。
彼女を通して「僕」は生きているということを見つめ直し、彼女がいる世界に希望を見出すようになります。
そこから生きること、死ぬこと、世界のすべてがかけがえのないものになっていきます。
「いきなりカニバリズムに目覚めたの?」
彼女は大きく息を吸って、ほこりに少しむせてから、意気揚々と説明を始めた。僕は彼女の方を見ない。
「昨日テレビで見たんだあ、昔の人はどこか悪いところがあると、他の動物のその部分を食べたんだって」
「それが?」
二人の会話文の独特なテンポライトノベル的なポップさ。お互いの人生をあざ笑うような空気が混ざり合って、不思議な世界観が生まれています。
本屋さんに置かれた恋愛小説によく見られる「泣ける!!」というポップ。「別に泣きたくて買うんじゃねーよ」ってなりますよね。
ですが、この本は読後に涙が出ました。オイオイ泣いてしまう、というよりも、気が付いたら液体が頬を伝っていることに気づくような、そういう感じの涙です。
世界のはかなさと、生きること死ぬことのかけがえのなさを教えてくれるとても美しい小説です。おすすめです。